JALで行く一人旅「たび技」    

JALそして一人旅を愛する皆様へ。JGC修行や一人旅をより楽しむための情報「たび技」をご紹介します。

JAL SKY Wi-Fiのインフラ環境を探る

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JAL国内線の無料サービス「JAL SKY Wi-Fi」ですが、通信速度にバラツキがありますよね。そもそもどのようなインフラ設備なのか、遅くなる原因はどこにあるのか深堀してみましょう。

高度30,000フィートでもネットにつながる仕組み

利用者のスマートフォンやPCが機内からインターネットにアクセスできるのは、機内のWiFiアクセスポイント>機体上部の衛星アンテナ>通信衛星>地上基地局という経路でインターネットに接続されているため。

 ちなみに、スマートフォンで機内のビデオプログラムを視聴するには、「JALアプリ」が必要だったりするので、予めダウンロード/アップデートしておくと良いでしょう。
www.jal.co.jp

国内線は米国Gogo.Incのサービスを利用

JAL「国内線」におけるインターネットサービスプロバイダは米国gogo社です。国内線の機内でPCやスマートフォンからWiFi接続する際のSSIDは「gogoinflight」となります。私も最初は何だこれと思いましたが、知っていれば怖がらずに接続できますね。gogoユーザアカウントも予め作成しておくのが良いでしょう。

https://buy.gogoair.com/upp/signInsignUp.do

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機内の無線アクセスポイント

 JAL SKY Wi-Fiに対応した機材では、機内に無線アクセスポイント(以下無線APと略)が777では6台、767や737では3台が設置されているそうです。さらにその無線APには無指向性のアンテナが接続され、機内全体をカバーしています。無線AP配置の設置位置は公開されていませんが、恐らく概ね均等ながら、高密度なエコノミークラスのエリアを考慮した配置。・・・そんな感じではないでしょうか。

 スマートフォンなどからWiFi「gogoinflight」を見た場合に、電波アイコンでは電波の強さは十分あるように見えるのではないでしょうか。自動的に電波の強いチャンネルをOSが選択してくれるので、見た目からはバッチリだと思うかも知れません。ただ、Wi-Fiの電波が強いからと言って、Internetの応答速度が早いとは限りません。遅い原因は他にもあるからです(後述)。

機体上部に衛星アンテナ

 JAL SKY Wi-Fiに対応した機材は機体上部を見れば一目瞭然です。衛星アンテナを格納しているレドームがポッコリと飛び出ているのが特徴です。(もうちょっと滑らかシェイプにならなかったのは、何か理由があるのでしょうかね)

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衛星アンテナは静止衛星を捉えて動く

 レドームの中にある衛星アンテナはAstronics社の製品が採用されています。同社のWEB(http://www.aerosat.com/)を見ると、航空機搭載用の青い衛星アンテナが出てきます。

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 同社のデータシートを見ると3つのユニットで構成されていているようです。(JALがこの構成のまま実装しているかは不明)

  1. Antenna :Fuselage Mount Unit(FMU)
  2. Antenna Control & Modem Unit (ACMU)
  3. High Power Transceiver (HPT)

 青い本体は水平方向に360°回転し、白いアンテナ部分も上下に稼働して静止衛星をトレース。1秒当たり12度の角度で動作などなどの記載もあります。 同社の製品ラインナップではF-210という製品とさらに上位グレードのF310というモデルがありました。F310の特徴はHigh Throughput Satellite(HTS)に対応している点です。このお話は次の「通信衛星自体」の話につながっていきます。

利用している通信衛星は?

 JAL国内線で先程のAstronics社の衛星アンテナと通信している通信衛星は、2006年4月に打ち上げられたJSATスカパー株式会社の「JCSAT-5A」です。

          JCSAT-5A - JSAT - SKY Perfect JSAT Corporation

 

 この間の通信はKuバンド(12~18GHz帯)という非常に高い周波数帯を用います。衛星アンテナ側のデータシートとも合致します。

  1. Receive Frequency: 10.7 GHz to 12.75 GHz
  2. Transmit Frequency: 13.75 GHz to 14.5 GHz 

機内のネットワークインフラ構成イメージ(予想)

 実際に国内線のWI-fIを利用して調べた情報などを加味して作成した機内のネットワークインフラ構成イメージ(予想)はこんな感じ。国内線のBoeing 777-200(座席数375)で全員がWi-Fiを利用したら払い出すIPアドレスが足りなくなるネットワークサイズですが、本を読んだり離陸後に寝ちゃう人もいるので、Wi-Fi利用者を50%計算とすれば問題無さそう。

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 また、JAL SKY Wi-Fiのチャンネル(利用周波数帯)は私が複数回搭乗して確認できた範囲となりますが、2.4GHzは「1ch/6ch/11ch」の3チャンネル、5GHzでは「W52」と呼ばれる「36ch/40ch/44ch/48ch」の4チャンネルが割り当てられていました。

 日本の総務省が認めているWi-Fiで利用できる周波数帯に「W53」「W56」と呼ばれる「5.3GHz帯(5250-5350MHz)」「5.6GHz帯(5470-5725MHz )」が残っており、15チャンネルが封印されていることになります。機内の無線チャンネルは多く割り当てて同一チャンネルでの競合を避けるデザインにすれば良いのに・・・と思ったのですが、一つ思い当たる節があります。

気象レーダーとの干渉を考慮?

 封印されし「W53」「W56」の周波数帯は気象観測レーダー、軍事レーダーなども利用しており、無線APが気象レーダー等を検知した場合は法令により当該チャンネルを停波し、別のチャンネルに遷移しなくてはなりません。しかも遷移先でも干渉が無いかの60秒のスキャンが義務付けられており、この間(60秒)は無線LANが使えないことになります。加えて、遷移前の周波数帯は30分間利用禁止です。

 これをDFS(Dynamic Frequency Selection)と呼び、家庭用のWi-Fi環境でもこの周波数帯を利用できる機種であれば実装されています。高速で移動する航空機では、航行中に何度も気象レーダーを受けてしまい、DFSの機能によりチャンネル切り替えと60秒の通信断が発生します。これでは利用者の使い勝手が悪すぎますよね。このため5GHz帯としては、DFSの影響を受けない「36ch/40ch/44ch/48ch」だけの利用に落ち着いたのではないでしょうか。

 本題のWi-Fiアクセスが遅くなる原因は?

 ネットワークインフラ構成を踏まえて、Wi-Fi通信が遅くなってしまうボトルネックがどこにあるのか考えてみましょう。

1)選んだWi-Fiチャンネルの「電波」が弱いケース

 PCやスマートフォンでSSID「gogoinflight」を選択した場合、その場所に到達している複数の電波(チャンネル)の中から電波強度の強いものをOSが自動選択します。下表は私が777のクラスJ席を利用した際の複数のチャンネルの電波強度を示したものです。(実際にはもっと大量にチャンネル候補を検出しています)

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 この時は2.4GHzの6chが自動選択され、瞬間値としては75dBmとなっています。dBmは電力レベルをmW単位で表しており、マイナス数値で表現されます。0に近くなるほど(数値が大きくな程)シグナル強度が強いチャンネルだと言えます。できれば-70dBm以上は欲しいところです。
この数値も常に変化しているので、選択したチャンネルがベストで無い場合があるかもしれません。その場合は端末のWi-Fiのオフ>オンを行い、で再度チャンネルを検索・選択させてみるというのは効果があるかもしれません。
上の表で言うと、5GHz帯の44chが最も良い数値を出しているので44chをセレクトできると良かったかもしれません。なお、44chが2つ見えていますが、近くの無線APの44ch(電波強い)と、機材後方にある無線APの44ch(電波弱い)を拾った状態です。

 2)選んだWi-Fiチャンネルが「混雑」しているケース

 さて、端末が電波強度が強そうなチャンネルを選んだ後は、他のユーザとの電波の取り合い合戦が待っています。Wi-FiはCSMA/CA( Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式であり、ある瞬間の無線APと通信をしている端末は1台だけです。
 データ衝突回避のためにランダム待ち時間を持ち、多数のユーザデータの送受信を順番に処理しています。1台の無線APにぶら下がるユーザ(実際にはそのデータ送受信)が多ければ多い程待たされることになり、時間当たりのデータ送受信量は減ってしまいます。いわゆる「遅い」というやつ。

3)衛生通信区間の遅延によるケース

 機内から外部のWEBサイトなどを閲覧するには、先述の通り通信衛星を折り返した経路となります。最も通信上のボトルネックになりそうなのがこの「衛星通信区間」です。限られた利用者共用の通信帯域なので、動画閲覧や大容量のダウンロードなどは控えるべきです。

 
 なお、Wi-Fi自体に問題があるか、衛星通信の遅延なのかを判定する方法として、機内のビデオプログラムが正常に視聴できるかで、ある程度判定ができます。ビデオプログラムのメディアサーバは機内にあると思われるので、ビデオプログラムは正常に再生出来ているのであればWi-Fi環境は健全。一方、WEBサイトやSNS関連の利用だけが遅い場合は衛星通信の遅延によるものと判定してよいかと思います。

JAL SKY Wi-Fiが遅い場合どうすれば?

 上記の通りで「混雑したら遅いのを我慢する」しか基本無いです。利用者側とすればWi-Fiのチャンネルを変えてみる程度しかとれるアクションが無く、自分自身も大量トラフィックを発生させるような行為を控えることくらいです。

JAL SKY Wi-Fiで何Mbps出るの?という観点では、電波強度や全体で流れるデータ量に依存する一方で帯域幅には上限があるため、空いていれば「数Mbps」出るかもしれませんし、混雑すれば「使い物にならないレベル」まで遅くなる可能性もあります。

 

  ー祈りましょう。当日の便が空いていて、競合する利用者が少ないことを。

 

技術の進歩と共にもっと快適になるはず

 JAL SKY Wi-Fiは将来的にもっと快適になると思います。通信衛星の項目の所で「High Throughput Satellite(HTS)」という用語が出てきました。通信衛星のサービスを提供しているスカパーJSAT株式会社の2017年9月のニュースリリースにヒントがあると思いました。

  1. 通信衛星 JCSAT-18 の 衛星打上げサービス調達契約を締結
  2. JCSAT-18 は、ハイ・スループット・システムを採用
  3. 打ち上げ時期: 2019年下期 

https://www.jsat.net/common/pdf/news/news_2017_0905_jp.pdf#search=%27JCSAT18%27

 また、Astronics社の衛星アンテナはアンテナ部分などはそのままに、ACMUという部分をアップグレードすれば「High Throughput Satellite(HTS)」に対応できるとあったので、衛星通信の高速化が期待できるのではないでしょうか。

 

 ということで、技術の進歩に合わせた高速化を待ちましょう。

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